太宰治
人間失格/太宰治
人間失格 (集英社文庫) | |
太宰 治 集英社 1990-11 売り上げランキング : 2602 おすすめ平均 心の奥をえぐられるよう 陽光から逃れるように こんな奴を世に出しちゃいかん、親のせいだよ。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
採点
50点
あらすじ(wikipedia)
第一の手記
- 「自分」は人とは違う感覚を持っており、それに対して混乱し発狂しそうになる。それゆえにまともに人と会話が出来ない「自分」は、人間に対する最後の求愛として道化を行う。だがその「自分」の本性は女中や下男に犯されるという残酷な犯罪を語らず力なく笑っている人間であった。結果的に「自分」は欺きあう人間達に対する難解さの果てに孤独を選んでいた。
- 第二の手記
- 中学校時代、「自分」は道化という自らの技術が見抜かれそうになり恐怖する。その後旧制高校において人間恐怖を紛らわすために酒と煙草と淫売婦に浸った。そのうちに左翼思想に触れ葛藤する。結果として人妻との暖かな一夜の後に、彼女と心中未遂事件を起こしたが、生き残り罪に問われる。結果的に釈放されるが、混乱した精神状態は続く。
- 第三の手記
- 高等学校を追い出され、「自分」は破壊的な女性関係に陥る。その果てに最後に求めたはずの無垢な女性に裏切られ、再び自殺未遂を起こす。その後は訳が分からないうちにどんどん不幸になっていきアルコール中毒のようになり、モルヒネに浸っていると、家族に騙され脳病院へ入院させられる。そして自分はもはや人間ではないという事になった事を確信する。不幸も幸福もなく、ただ過ぎていくだけなのだと最後に語り自白は終わる。
読んだ動機
言わずとしれた日本の名作を今更ながら。
こんな人にお勧め
絶望に迷う人間の心理を垣間見たい人
内容のレベル
6
人間失格を好く人・嫌う人
人間失格を読んでみたが、本書に感銘を受ける人と受けない人には大きな差があると感じた。
まず、サブカル雑食手帳さんから引用の引用
心理学者の岸田秀氏曰く
「奥野健男氏によれば、『この作品は、ある性格を持って生れた人々の、弱き美しきかなしき純粋な魂を持った人々の永遠の代弁者であり、救いである』そうだが、わたしに言わせれば、『人間失格』は、この上なく卑劣な根性を『持って生れ』ながら、自分を『弱き美しきかなしき純粋な魂』の持主と思いたがる意地汚い人々にとってきわめて好都合な自己正当化の『救い』を提供する作品である。」(「ものぐさ精神分析」所収「自己嫌悪の効用」)
まさしくわたしが言いたいのもこれだ。
わたしは、あまり感銘を受けなかった方の人間だが、それはなぜか?なぜなら、本書は人生とはネガティブな事の連続であり、本書の主人公もそのネガティブという前提を盾にして人生を正当化していただけの事に過ぎないと思われたからだ。もちろん今の時代背景と当時の時代背景は、様々な面で違うであろう。
しかし、本書の主人公は望めば裕福で、快適な生活にたどり着けるところまで来てたんじゃないかという時期もあった。しかし、結局はネガティブな人生が自分の生き場として捉えていたので、客観的に見て堕落していく人生に終止符を打つことは出来なかったのであろう。もちろん当の本人は心のどこかでそういった人生の方がいいと思っていたのかもしれないし、または気付いたときにはもうその人生から抜け出すことが出来ない状態だったのかもしれない。
そこで、本作に感銘を受ける人とは、人生をネガティブに捉え、努力すること等のポジティブな感情を心のどこか嫌うことを本作で正当化してくれたと感じる人間なのではないだろうかと思われる。
「お前に何が分かる」と言われそうだが、ネガティブな感情の大半は逃げでしかなく、またその逃げにより、自分が特別な人間だと思っているのか知らないが、案外ネガティブさは心地よいものだったりする。
もちろん、わたしもたまにはネガティブな感傷に浸ることがあるのだが、一方でそれは、別に意味があることではないと思っていたりもする。さらに、それならポジティブに創造的な事をしたらどうか?と自問自答したりもする。
まぁ結局は、他人ごとだから止めはしないけど、ネガティブ感情に浸っている暇があったら、他に何かすることがあるんじゃないか?と自分自身にも問いかけつつ、本書に共感している人にも問いかけてみよう。
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