社会

「骨太の方針2007」のメモ

posted in 08:38 2007年07月22日 by 涼微
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参考リンク

骨太の方針 2007 (PDF)

経済財政改革の基本方針2007のポイント  (PDF)

企業も人も日本から逃げ出す「骨太方針」

森永卓郎:安倍政権初の「骨太方針」で増えたもの

メッセージ性の不足←抽象的正論の羅列・作文でしかない・具体的な数字の欠如

美しい国・イノベーション加速←抽象的過ぎる

内容の多さ←予算獲得のための手段化

効率性の向上→ユビキタス特区の設立→日本は既にユビキタス状態である

人口減少化における成長の実現→労働生産性の向上(時間当たり付加価値G7水準)→失業率の増加

労働生産性の向上→中小企業底上げ・地域力再生機構・規制改革

最低賃金の向上→仕事の流出

オープンな経済システム→金融、資本市場改革・航空自由化

EPA(経済連携協定)の締結→日本の国際競争力の弱さから失業の危機

IT革命の浸透+新興国の台頭→日本もIT技術の革新・オープンな経済→戦後レジームからの脱却→社会保障制度・社会資本制度の再設計・労働市場、資本市場の機能強化・行政単位の見直し

東京23 区内のハローワーク2か所における無料職業紹介について市場化テストを行う←骨太方針に書くレベルではない

大前氏の結論→ただの思い付きである

参考文献

日経新聞 経済教室 6/25 〜 6/27

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地域格差拡大による中小企業への影響とその改善策

posted in 10:00 2007年06月27日 by 涼微
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参考文献

中小企業白書

前書き

これは某授業へのレポートである。ほとんど文献からのアレンジ無し&補足しないといけないところ(字数に達したからといってどう考えても改善策が短すぎだろ 笑)や変な言い回しがある事も分かっているが直さないのはエネルギー最適分配のジレンマから生じているのであろう。(自分が教授でこんなもん持ってこられた日には、仕方なく単位をくれてやろうというレベル)しかし、中小企業白書は無味乾燥だと聞いてたけどぼちぼち面白いかな (’-’*)

本文

 2006年度は好調な世界経済や円安による輸出産業の伸び、堅調な設備投資によって景気回復が推し進められた一方で、有効求人倍率や完全失業率といった雇用水準の格差に見られように地域間による景気回復のばらつきが見られた年であった。その最大の要因は地域間の産業構造の違いに依るところが大きい。というのも、昨年度の景気回復の要因は上記の通り好調な輸出産業に依存しておりその恩恵を享受している業種は一般機械や輸送機械、電気機械等を作る製造業である。この製造業は中部・関東・中国地方に多く集積しており、逆に北海道・東北・九州・四国地方に占める割合は相対的に低く留まっている。

 一方で、近年の政府の方針による公共事業の削減の損害を被っている建設業の分布は製造業の分布とは逆転し、北海道・東北・九州・四国地方で高い割合を占め、中部・関東・近畿・中国地方では殆ど活動していない。さらに、機械関連業種と生活関連業種の割合を地域で比較して見てみると、生産が右肩上がりの機械関連産業が占める割合が高い地域は東北・中部・関東・中国・九州地方であり生産が減少傾向である生活関連産業に占める割合が高い地域は北海道・四国地方となっている。この様に業績が好調な産業と不調な産業の地域による偏りが見られ、さらに公共事業の削減による所得の再配分機能が弱まっている事も合わせて、賃金格差による消費水準の違いや設備投資水準の違いが現れる事で需要のばらつきが生じている。特に景気が好調な関東・中部地方に対して北海道・四国地方といった景気が低迷している地域の格差図式は不公平感が生じ深刻な事態となっている。

 この様な図式は中小企業において特に顕著に当てはまる。というのもグローバルな展開を持ち世界経済好況の恩恵を受けている大企業に対して、中小企業はまだ消費が伸び悩み十分な景気回復とは言えない国内を相手にすることが多いので地域格差の影響も伴い経営状況が良いとは言えないところが多いからである。ではこういった地域格差を是正するにはどうしたらよいのだろうか、ここではその解決策として地域特有の資源を有効活用する事で地域自発的に格差を是正することが出来るかどうかについて検証してみる事にする。

 一般的にどの地域でも他の地域とは違った特有の資源<特産品や伝統的に継承された製法、地場産業の集積による技術の蓄積、自然や歴史遺産といった文化財等>を有している。そういった特有の資源を使うことによって地域外からの需要を取り込み格差是正に繋げるという方法が考えられるが、ではそのためには具体的にどの様な戦略を実行したらよいのだろうか。そこでまず考えられる方法は各々の地域の資源の特性を活かす事で差別化を図り競争力を高めることである。というのも各地域の中小企業が競争する相手で最も厄介なのは、価格競争を仕掛けたところでその経済性差から遠く及ばない大企業であり、その対策として差別化を図り付加価値を付ける事で初めて対等な競争が出来ると考えられるからである。そして、実際の地域特有産業においても付加価値を付ける事による製品・観光事業の差別化が行われている。これは例えば、中小企業による地域特有産業の価格帯が大企業の価格帯よりも高いことからも見て取れる。というのも仮に中小企業が差別化を図ることなく大企業と類似した商品を販売したと仮定すると、有益な差が見られない以上価格競争に陥ってしまう可能性が高くなり、多くの場合価格は適正な値に収束してしまう。しかし、各地域の中小企業は差別化を図ることにより付加価値を付ける事で高価格帯を維持することが出来ていると考えられる。

 では、具体的に差別化のポイントとなるのはどの要素だろうか。三菱総合研究所の「地域中小企業の差別化への取り組みに関するアンケート調査」によると、商品のデザイン・イメージ・知名度といったブランド戦略、販売先との信頼関係の構築、とにかくその地域特有資源の使用を挙げる業者が多いという結果になった。果たしてこのような取り組みは妥当なものと言えるのだろうか。ここで留意しておかないといけない事項は、おそらくどの地域も上記の取り組みはある程度行っているはずであり、また仮に多少改善したとしても地域格差是正の決定的な要素になるとは思われない事である。そこで、ここで提案したいのは新商品の開発に着手することである。そのためにはまず、地域に特有の経営資源を見出しそこから徹底的なイメージ戦略に取組むと同時に他者との連携を働きかける事が先決であろう。またここで大事なのはその販売先を地元のみに留めずに他地域にも積極的に拡販していくことである。

 以上のように主に産業構造の差異による地域格差から中小企業が脱却するための指針を示してきたが、これからも景気が良い地方への人材流出等でより一層の格差拡大が予想される。そういった状況で地域を活性化させるのにその地域に密着した中小企業が担う役割は今後大きくなって行く事であろう。

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国家の品格/藤原正彦

posted in 15:14 2007年06月20日 by 涼微
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国家の品格 (新潮新書)
国家の品格 (新潮新書)
新潮社 2005-11
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おすすめ平均 star
star説明内容に論理の一貫性、整合性がない、「玉石混交」の書
star「日本人としての使命」を再確認させてくれた
star日本再生の鍵

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批判意見も肯定意見も出尽くしてるだろうから今更感が大いにあるのだが、わたしは大衆的に話題になっている時に乗っかるのが情緒的に(笑)嫌なタイプだから(天邪鬼?)かなり時期外れの今書評でもしてみよう。

論理それ自体にパラドクスが存在しまた論理には誤謬も多く含んでいる事は既存の事実だけれども、それを知った上でも論理絶対主義に陥っている人には再確認の意味を生じ得るであろう内容が第二章では展開されている。しかもこういった論理絶対タイプは結構自分で気付いていない事が多く、ある前提から結論まで辿る作業においてその各道筋が起こる大体の確率を計算していくと50%にも満たないない事は多々あるものであり、またその前提が間違っている事も多い。

さて、本書は「武士道」という情緒や形を根底に論理を組み立てるのが良いという主張なのだがわたし個人としては「大筋は」同意出来る。(内容自体は一方の主張(武士道精神)の良い点とそれに対する主張(合理的精神)の悪い点の羅列に終始して大して議論が進んでいないのでいまいちだが)この「大筋は」というのはその情緒や形の大事さを取り上げるにしても武士道よりもう少しましな思想があるのではなかろうかという事である。「ならぬことはならぬのです」なんていう言葉が通用するのはせめて十代の間だけで、著者も大事だとしているある程度の論理を身につければ、なんでだめなのか?と考える事は当然である。確かに情緒というか論理とはまた違った思想も大事だがわたしは寧ろ小さい頃から論理的な思考を身に付けさせた方が自分で考える力が発達し良いと思う。つまり、著者としては論理<情緒なのだろうが、論理>情緒でないとただ感覚的に物事を考える人間が多すぎてそもそも話しにならない場合が多い

さらに、結局の結論が「数学者」として論理もへったくれもない過去正当化装置(少なくともわたしにはそう見える)としての懐古主義的な「武士道」というのはお粗末極まり無いのではなかろうか。(自分がやってきた事全否定というのはある意味凄い)というのも、藤原氏も世界を飛び回ってきた中で様々な考え方に触れてきた事だろう、それでも武士道的な情緒を前提に置くことが最善だと思ったという事は、その根底には「ナショナリズム」と「懐古主義」の影がちらついている。

ところでわたしは本書を読むより先にネットで大体の批判を眺めたのだが、本書を読んだ後に批判点を見ると本質を突いていない批判が多々存在する。本質を突いていない理由というのは、まず第一にいちいち部分的な批判をするだけで主張の本質を批判出来ていない、第二に本書の内容が論理を全否定して形や情緒のみを肯定していると思い込んでいる事から批判しているもの(つまりちゃんと読めていない)等々お粗末な批判ばかりで、ではなぜこの様に「便乗的」な批判をしてしまうかというとおそらく本書が大衆にも受けてベストセラーになったというところにポイントがあるのではないだろうか。というのも、本書を無理やりにでも批判して普段本も読まないような大衆とは俺は違うぞとでも示したい、それこそ本書で著者が言及している「自己肯定のための論理」に近い精神があるような気がしてならない。そういった人はもう一度本書の「大意」をしっかり捉えなおすべきである。

参考批判

池田信夫 blog



観光学研究

posted in 21:29 2007年05月29日 by 涼微
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4641121303 観光学入門―ポスト・マス・ツーリズムの観光学
岡本 伸之
有斐閣 2001-04

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 今、地方の大学で観光学の学部・学科を設置する所が増えているという。観光学とはwikipedia によると 

経済の発達に伴い、「楽しみのための旅行」が、広く普及し、マス・ツーリズムの時代が到来した。これに伴い、「いかにしてより満足できる観光が実現するか」などといった問いが立てられるようになり、他方では観光地の開発などにより、環境破壊などの問題が出てくる。観光学は、これらの問題を解決していくためにある。しかし、必ずしも学問として体系だったものではなく、観光「学」と呼べない、という意見もある。

との事、一応経済学系統という事らしいが。わたしが初めてこの観光学というのを聞いた時、学問ととして小分けして体系立てる程のものなのかどうなのか、また”学問”というより”専門職”的なニュアンスの方が強い気したのだが、どうもこの観光というものは地域活性化のために国を挙げて振興しているようで、観光事業の人員増加のためにも大学の利用を促進しているようだ。

現在観光を学部・学科に付けた大学は33あり、特に今年観光学科を新設した和歌山大学には80人募集のところ680人志願というなんだか知らないところで大人気のようである。

そこで、観光学とは何を学ぶのか大阪観光大学なるところのカリキュラムを見てみたところ、 なんだかいろんな学問の科目をごちゃ混ぜにして一部「環境」という文字を足しているだけの様に見えるのはまだ体系付けられていない証拠だろうか。

やはりカリキュラムを見ても演習が多いようで大学というより専門学校という方が近いような気がするのだがどうだろう。また、”旅行ガイド・添乗員論””ブライダル概論””ホテル実務概論”等といった実際の職務に基づく授業は理論化された体系を習うよりより実地に出向いたほうが何十倍も分かり易い気がするのだが、つまり無理やり学問感がまだ拭えていない。

さて、これから観光学は大学に定着していくのかどうなのか外から見ている分には、理論化し大それた学問にする程の必要性は感じられないのだが、まぁ授業を見たことも際立った実績を聞いたことも無いのでなんとも言えない。

(実際を知らないでやけに批判的だけども、仮に実際と私見との間に乖離がありましたらここにお詫び申し上げますm(__)m)

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大卒採用来年春13,5%増 & 働くということ/黒井 千次 

posted in 10:04 2007年03月26日 by 涼微
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3月18日の日経新聞に

「大卒採用来年春13,5%増」

という記事が一面にでかでかと出ていた。

この記事から来年、大学院進学を目指している者が考慮しないといけない事は、「果たしてこの就職における所謂、『売り手市場』の来年の現状に対してでも就職せずに進学する事のメリットはあるのか」という事だ。

仮にこの二点を吟味しないで一義的に進学しようとする者がいるのなら(メリットをしっかり考慮していないのなら)、はっきり言って「視野が狭すぎのただの猪突猛進」であるからこの先の人生も苦労する事だろう。

さて、ここからは自分自身について分析して文章にしてみたいだけあるから特に興味が無ければこの先は読まなくてもよろしい。


と思ったが、急に思い立って大学院に行くという報告と高校時代の参考書を実家に数百キロの距離を日帰りで取りに帰ってたら時間と体力の消耗と供に書く気が消滅してしまった。

まぁ断片的に書くとすれば

一日中思考・勉強している最近の生活から、体を使うより頭を使うほうが好きなようだ。そして、そういった職には資格を取る・高等教育を受ける等して勉強している姿勢を示す事が大事であろう。

一般的に「文系大学院は就職に不利」と言われるが、少し考えてみればそんなことは無い。大学院の二年間分他の人より高等教育を受けていたとアピールすればどうにでもなる自信がある。

それともう一つ所謂「学歴ロンダリング」は悪しきものだという風潮があるがそんなことは無い。そもそも、たかが人生18年間目でその後の人生の数十年を決める(言うまでも無く大学受験)などというのは暴論であり大学在学中に何かに気付く者もいるだろう。そういった人の救いとしての大学院というのがあっても良いと思われる。

しかも、そういった人(少なくともわたし)は大半の大学入学の様に、ただ入ることが目的というわけではなく、その後の人生を考えた末の合理的選択であることが多いのではなかろうか。もっともこれはわたし以外の人に関しては希望的観測であるが…

そういうわけで、「働くということ/黒井 千次」については言及はしなかったが、敢えて言うなら働くことに疑問を呈している人は一度ぐらい目を通してみたらその疑問は解消できるかもしれないよ。

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(書評)インテリジェンス 武器なき戦争/手嶋 龍一・佐藤 優

posted in 23:29 2007年03月01日 by 涼微
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項目

 序章  インテリジェンス・オフィサーの誕生
第1章 インテリジェンス大国の条件
第2章 ニッポン・インテリジェンスその三大事件
第3章 日本は外交大国たりえるか
第4章 ニッポン・インテリジェンス大国への道

採点

85点

(書評)インテリジェンス 武器なき戦争

外交をするに当たって、インテリジェンス(情報)を扱うことは必須条件である…本書はそういったテーマの下、手嶋 龍一氏・佐藤 優氏の両インテリジェンスオフィサーが国際的または歴史的な外交インテンジェンスの話題を出しながらの対談形式で進められていく。

「インテリジェンス入門書」と言う触れ込みだがまさにその通りで、というのもわれわれ一般人が表面的に情報を受け取っている限りでは分かりえない裏の事情が彼らインテリジェンス分析官には分かり、そのインテリジェンスから分析した情報を用いて、外交を運ぶ重要さを初心者に分かりやすく説いている。

さらに、その重要さを説く際の事例が豊富なのである。例えば、第二次世界大戦期に日本で暗躍した二重スパイであるリヒャルドゾルゲについての事情や、はたまたイラク戦争における各国の動きをインテリジェンスを中心に追ったり、とにかくわれわれではとても思いもつかない分析を展開しインテリジェンスの魅力を220ページに渡って語っている。

また、両人は日本がインテリジェンス弱国である事を心から憂れいている。それは、本書一番の主張であるところのインテリジェンスに携わる人材を育てよと何度も繰り返しているところからも読み取れるが、近い将来お二方が先陣を切って行動に移すのではないかという期待も持たせてくれる。

しかし、本書の情報をすべて鵜呑みにしてはいけない。というのも両人が言っているようにこういった公に出る情報は、二重にも三重にも仕掛けを施してあるものだからであるが、本書におけるその仕掛けを見抜くのも面白いかもしれない。

(感想)インテリジェンス 武器なき戦争 に続く

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自壊する帝国/佐藤 優

posted in 17:33 2007年02月02日 by 涼微
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内容(「BOOK」データベースより)

ソ連邦末期、世界最大の版図を誇った巨大帝国は、空虚な迷宮と化していた。そして、ゴルバチョフの「改革」は急速に国家を「自壊」へと導いていったのだった―。ソ連邦の消滅という歴史の大きな渦に身を投じた若き外交官は、そこで何を目撃したのか。

採点

90

項目

序章 「改革」と「自壊」
第1章 インテリジェンス・マスター
第2章 サーシャとの出会い
第3章 情報分析官、佐藤優の誕生
第4章 リガへの旅
第5章 反逆者たち
第6章 怪僧ポローシン
第7章 終わりの始まり
第8章 亡国の罠
第9章 運命の朝

内容のレベル     

         8

(書評)自壊する帝国

そもそもわたしが本書を読んだ理由というのは、特にロシアの歴史に興味があったわけではく、ただ佐藤優氏の著作を一冊読んでみようと思い手にとってみただけであった。しかし、話題に違わず本書もなかなか刺激的な書だったのでまず、その特徴を記述していこう。

本書は佐藤氏が崩壊前後のソ連において、どんな人物と関わり、どの様な行動を取ったのか、という事を記述したノンフィクションの歴史物である。そのストーリーおいて、主線で展開されていることにおいては、「人脈」というのが一種のキーワードになってくると思われる。というのも、本書におけるソ連崩壊の歴史的記述については、おそらく類書が結構あり、(わたしとしては知らない事だらけだったが)特に目新しい内容でもないと思われ、では何がこの本の独自性かというと、佐藤氏の「人脈」に関わることではないかと思われたからである。

さて、その「人脈」形成において一番貢献したのは、頭がきれることを前提とした、氏の宗教に対する知識であろう。そもそも彼は同志社大学で、特に東欧の神学について勉強しており、その歴史的背景に対する興味・知識が随所に発揮されていた。というのも、彼の人脈を広げるキーパーソンとなったカザコフという人物も彼がソ連赴任中世話になった大学の哲学科で知り合ったし、後々会う人物にも哲学的素養を持つ人物が大勢いた。この事実は、かの時代の無神論であった共産主義のソ連でさえ宗教観を持っているのだから、他の諸外国においてはそういった思想が根付いており、日本の思想観と大きなずれがあることを再認識させられた。

また、一般的にいうと「人脈」形成においてはいかに相手と親しく出来るかどうかが大いに関わっているのではないだろうか。しかし、佐藤氏本人によれば彼は、人見知りが激しいそうなので、それを表に出さず、いかに懇切丁寧に要人と接してきたかが窺えるものである。

また、ソ連の人々に根付いた考え方が、いかに当時の激動と関わっているかも察することが出来る。特にこの時代は当時のソ連の民族性がいかんなく発揮されていたことであろう。といのも、本書にも書いてあったが、人は危機的状況に陥ると本能が剥き出しになるので、ということは当時の状況からして人々に根付いていた思想が色濃く出たのではないかと思ったからである。

さらに、ゴルバチョフ氏の評価は日本と違いかなり悪いという事などの、情報量の差異や方向性の違いによる認識のずれが生じていることも思い知らせれた。それは、当時の一線で見てきた人との認識のずれを窺い知ることが分かる一端である。

さて、本書を総論すると歴史的事実や民族性はある程度の水準の知識を持っている者ならば目新しいことはないであろう、しかし、一級の頭脳を持つ佐藤氏の視点からのソ連崩壊前後の背景や洞察、要するに当時のソ連に深く関わった日本人の一人として、提供する歴史的背景や彼の近辺を含めた当時の物語を味わいたい人は間違いなく必見の一冊である。

私的感想

いやはや、本書はわたし程度の知的水準では、「インテリジェンス」との格の違いを存分に見せつけられる一冊であった。特に、哲学・思想・政治・外国語・民俗学・社会学・歴史etcのあまりの知識の足りなさに知的欲求を大いに刺激させられることとなった。そういった観点からも必見の一冊である。というのもわたしは、途中でグーグル検索をして、後々読もうと思う関連書籍を探し回った程である。

ところで、上記のようにいまいち知識地盤が弱いことと、さらに横文字ネームに慣れていないことも手伝って、読破するのに時間が掛かる人もいるから少し注意が必要である。

それにしても会話が「〜か」で終わるのがたまに気になる (笑
例えば、「それは本当か」とか「どういう意味か」とか、「〜か」が何回も続くので、たまには語尾ぐらい変えればいいじゃないかと思ったが、まぁ内容がいいので細かいことは気にしない様にしておこう。

しかし、これは、国家の罠とインテリジェンスも間違いなく読むことになりそうな読後感だなあ^^;

興味深い関連ブログ

その後の佐藤優 その1 『自壊する帝国』

太田述正コラム

日暮れて途遠し 

manuke.com 

お菓子を片手に、日向で読書♪  

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