バカの壁/養老 孟司
posted in 06:09 2006年12月29日 by 涼微
採点
75点
内容
人が知らず知らず作る壁の説明
項目
第1章 「バカの壁」とは何か
第2章 脳の中の係数
第3章 「個性を伸ばせ」という欺瞞
第4章 万物流転、情報不変
第5章 無意識・身体・共同体
第6章 バカの脳
第7章 教育の怪しさ
第8章 一元論を超えて
読んだ動機
高校時代の国語の先生が勧めていたのを思い出したから
こんな人にお勧め
1、脳について知りたい人
2、自分が知らず知らず作る壁の原因や影響を知りたい人
内容のレベル
6
壁の逆説性
(背景)
本書では主に、脳が自動的に作る壁についての弊害について書かれていたのだが、果たして弊害ばかりの機能が身体的に維持している事は普通のことなのだろうか?そいういった機能には、人が生きていく上で何かプラスに働いていることがあると考えるのが妥当である。よって、まずはその事について考えていくことにする。
その点で、本書にも書いてあったことだが、何か嫌悪を感じることについての脳による無意識な遮断である。この機能が働くことで、日常を生活をしていく上で精神にあまり負荷が掛からないようにしていると考えられる。それもそのはず、人間とは自分の意見に相反する意見を受け入れ難い、精神的に弱い生き物だから、自分に不都合なものを自動的に遮断し都合の良いほうに持っていく方が楽だからである。
しかし、こういった考え方は個人的に見ると確かにプラスなのかもしれないが、全体的に見ると往々にしてマイナスに働くことが多い。というのも、無意識に遮断された後に残っている情報しか脳に残っていないので、どうしても偏った考え方に陥りやすい。その結果、様々な凝り固まった主張が対立して双方を受け入れる事が出来なくなるからである。
(解決案)
そこで、本書の内容によると話しても無駄だから諦めろといったニュアンスだったが、言い換えると、多くの人は自分の主張に反する事を受け入れる事が出来ないほど柔和性がないから無駄だと表すことが出来る。
しかし、果たしてそうだろうか?そもそも、相手の主張を受け入れられない事態に関しては、少なくとも二つの可能性がある。一つは全くもって自分の主張が正しいと思っているから受け入れられないケースと、もう一つは、ある程度相手の主張は受け入れているが、ある種の意地で自分の主張を押し通そうとしているから受け入れられないというケースである。壁といったニュアンスは主に前者のケースを指すのであろうが、果たして皆が皆自分の主張のみが正しいと思っているのだろうか?
わたしは、皆どこか自分の主張も譲歩する点があるとある程度気づいているという立場から、単にある種の意地を張っているだけと考える事により、双方が納得できる解決案があると考えている。というのも、相反する二つの主張が最終的に求めているのは自分の利益である。短絡的だが、最終目標が同一に表される利益であるという事は相互に利益を得られる中立点があると考えられるからである。
反論としては、利益の方向が逆だから互いに受け入れられないのではないか、ということが考えられる。しかし、利益における最も重要なファクターと考えられるものは双方の立場の保持ではないだろうか。というのも、本書で議題にしている、イタズラ小僧と父親、イスラム原理主義者と米国、若者と老人、の主張の相反においては、自分の立場を保持したいから対立するものと考えられるのである。そう考えられる以上、どこか壁となっている主張を解せば、大概のことは相互理解が得られ双方ともに共存する道があるのではないだろうか。
「大概のことは」と書いたのは、正直わたしではよく分からない点が多々あるからであり、結局は机上の空論となっているからだ。例えば、人を殺す欲求を持つ人と共存する道を考える事は、そういった人たちの心理をいまいち理解できない以上共存するのを許容することが出来ない。しかし、端から理解出来ないと突き放して壁を作るよりは、何か具体案を考える方が建設的である。まぁこれにもいろいろ反論があるだろうけど。
最後に、そもそも作者自身が「話せば分かるなんて大うそ」という壁を作っているのがよく分からない。逆に考えた「話せば分かり合える」というのと、どちらが壁かというと一目瞭然である。
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