経営学入門 上 日経文庫/榊原 清則 (7)

posted in 01:44 2007年08月22日 by 涼微
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一日ちょっとで終わるかと思ったら三日近く掛かってしまった。もっとも、終了予定というのは一般的にずれ込むものなので、予備日を設けておくなどして事前に覚悟しておくのが現実的だろう。

さて、今後また一日中文章を書く機会はいつ頃訪れるのか訪れないのか。


戦略論へのゲーム理論の応用

 

 以上においては、ポーターの競争戦略論を紹介してきましてきました。この競争では、勝者がいれば必ず敗者がいる競争です。しかし、現実では必ずしもそういうわけではなく、例えば、他企業の成功に助けられて成功する企業も数多く見られますこのような現象に光を当てるためには、ゲーム理論における補完財の概念が有効です。ゲーム理論を採用した新しい戦略論を展開したネイルバフトとブランデンバーガーのアイデアは「価値相関図」という枠組みに凝縮されています。これは、仝楜勠∪源才彖任龍ゝ觴圻6チ菫蠎雖な箚虻發鯆鷆,垢詈箚虻眄源瑳圓了佑弔当該企業を取り囲む枠組みです。この図に登場する全てのプレイヤーの間には、勝つか負けるかという競争の側面と、双方が勝つ協調の局面があります。これを「コーペティション」(競争と協調を合わせた造語)と言います。

 

ドメイン戦略論

 

組織がやり取りする特定の環境部分の事をドメインと言います。ドメインはまた組織の活動の範囲または領域の事であり、組織の存在領域とも言い換えられます。そのドメインの決定がドメイン戦略です。いま企業に着目すれば、企業のドメインは、製品やサービス、対象としている市場や顧客層や地域、その企業が研究し保有している技術の領域、等々によって記述することができます。ドメインは組織の活動の範囲や存在領域は組織の種類によっても、また特定の種類の内部でもさまざまです。

 ドメインという言葉の中には、活動の成果が売り上げや利益といった形で出てくるものはもちろん、活動の成果が見えず、その点でまだ潜在的な状態にとどまっているものも含まれます。たとえば、ある企業が、将来の事業展開をにらんだ、その意味で先行的な研究に、たくさんの研究者を従事させているとすると、たとえその成果が製品に具体化された形で市場に出ていなくても、その様な活動を含めてその企業のドメインなのです。そのような場合、俗に「含み」が多いとか「楽しみ」が多いという言い方をします。

 戦略論では、ドメインの事をとくに「戦略領域」という場合もあり、その意図は、企業の事業展開の方向やポテンシャルに着目し、めざすべき領域や範囲としてのドメインの側面をとくに強調したいからです。ドメインには、このような戦略領域としての側面と、すでに具現化された現実の事業領域としての側面とがあります。「われわれは今どのような事業を行っており、今後どのような事業を行おうとしているのか」「わが社はいかなる企業であり、いかなる企業になろうとしているのか」という基本的な立脚点を改めて確かめ、意識的にドメインを決めることは、差し迫った必要がないように見える場合でも、実は常に重要な事なのです。

 事業領域と戦略領域の区別と似ている議論に、ドメインの物理的定義と機能的定義の区別があります。物理的定義とは製品・サービスの実態に着目します。しかし、ドメインの物理的定義では限界が多く、それは第一にこの種の定義はカバーしている範囲ないし領域が空間的に狭く、第二に将来に向かって企業がどういう方向に伸びていこうとするのか、その方向性がはっきりしないからです。この物理的定義に対比されるのが、ドメインの機能的定義で、例えばこの定義では競合会社や市場機会の認識、代替素材に対する備え方が全く違ってきます。

 ドメインを変えていくことは、場合によって簡単な事ではありません。とりわけ物理的定義に立つ場合、変化を積極的に阻止する傾向があります。しかし、企業の環境は常に変化するので、ドメインも一定不変ではあり得ません。ドメインを有効に機能させるためには、時間とともにそれを変えていく必要があります。ドメインの変化には例えば、〆能蕕話碓貉業で、物理的定義に片寄ったドメインをもっていた、△修慮綛がりのあるドメインを打ち出し、技術開発と多角化で一定の成果を挙げた、しかし事業展開が総花的になったので、再度ドメインの絞込みを図った、という推移などがあります。

 経営者や管理者が主観的に規定するドメインは、組織のメンバーや外部の人々によって広く支持されたときに、初めてドメインとして機能します。そうだとすれば、ドメインの定義が重要であると同時に、経営者と組織メンバーとのやりとりを通じて、あるいは企業組織と外部環境とのやりとりを通じて形成される、ドメインについての「合意」(コンセンサス)もまた重要であるというべきでしょう。このような意味でのドメインに関する社会的合意のことを、「ドメイン・コンセンサス」と呼びます。企業が社会的存在であるという事は、ドメイン・コンセンサスの形成に如実に反映されます。ドメインがうまく機能するためには、ドメイン・コンセンサスがどこに、どういうかたちで形成されているかという事が決定的に重要です。顧客を離れて企業はあり得ず、社会を離れて企業はあり得ない事をもっとも端的に示すのは、ドメイン・コンセンサスなのです。

 それでは、企業のドメインを把握するにはどうしたらよいのでしょうか。ドメインは、企業がやりとりする環境についての広がりの概念であり、その広がりは三つの次元を使って表現できます。第一の次元は、組織の活動の空間の広がりです。これは一般的には、非常に狭い領域で活動しているのか、あるいは、逆に、多種多様な活動を幅広く行っているのか、という対比です。第二の次元は、組織の活動の時間の広がりです。これは、ドメイン自体の中に時間軸があるかどうかということです。発展性、変化性、あるいは動態性の次元と言い換えてもよいものです。活動内容の変化やその方向、変化の道筋について洞察を含まないドメインは静的な規定で、それとは逆に、変化についての洞察を含むドメインは動的な規定です。第三の次元は、組織の活動の意味の広がりです。これは特定の経営者・管理者に固有で特殊なものか、それとも反対に、組織のメンバーや社会の共感を得る事ができる一般的なものか、という対比で表されます。この次元は、ドメインがどの程度明快で、理解可能で納得できるかということに関係します。普遍性の高い価値や倫理性にもそれは関わっています。普遍性の高い価値や倫理性の豊かなドメインは、意味の広がりが大きなドメインです。

 企業のドメインには、空間の広がりと時間の広がりと意味の広がりが必要です。広がりが無ければ、空間的に狭小で、発展性に乏しく、かつまたきわめて特殊なドメインになってしまいます。しかし、三つの次元のそれぞれにおけるプラスの方向が、なんら限定なしにどこまでも望ましいかというとそうではなく、空間の広がりが大きすぎると活動の境界が不明になり、焦点が定まらない危険があります。変化性が高すぎるとドメインの規定は、安定的・持続的な事業活動のもつメリットを失わせる危険があります。さらに、ドメインの一般性が高すぎる場合には、その企業の独自性や固有の存在意義が失われる危険が出てきます。それゆえ、以上に述べてきたプラスとマイナスのぶつかり合いのもとで、一つひとつの次元に沿って自社の位置づけをはっきりさせ、またそれを適宜改変していくこと、それが戦略策定におけるドメイン戦略の課題です。

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