経営学入門 上 日経文庫/榊原 清則 (6)

posted in 03:47 2007年08月21日 by 涼微
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経営戦略論

 戦略を決めるという事は、ドメインを定義し、資源配分を決定し、競争ポジショニングを行うという意味です。ここでは、その各論に入る前に戦略論の基礎的な論点を挙げます。まず組織の広義の目標について現実の企業の場合にどのようなものとして把握されているのでしょうか。抽象的にいえば資本主義社会の企業はすべて利潤目標という同一の目標を持つと考えられますが、現実の企業はより具体的な、そして多くの場合、多元的かつ相互に対立する目標に支配されています。要するに、同じ資本主義企業といっても、そもそも何を追及しているのか、戦略の前提に当たるものが必ずしも同一ではないのです。さて、企業ごとに目標が定まったとすると次に問題になるのは、戦略自体の策定です。戦略策定のプロセスはまずヾ超における機会と脅威の識別に始まり、⊆社の独自能力(強みと弱み)の評価を得て、4超条件と独自能力のマッチングを図る事で終結します。マッチングの試みはインサイド・アウト―組織体の内側から外を見て環境を洞察する見方とアウトサイド・イン―環境の側から組織を見る見方という、二つの異なった方向から遂行できます。

 

資源戦略論

 

 資源戦略とは独自能力としての経営資源をいかに獲得・蓄積・配分するか意思決定です。戦略論で取り上げる経営資源は、大別すると二つあります。第一はヒト、モノ、カネなどの有形の経営資源で、第二は技術、ノウハウ、信用、ブランドなどの無形の経営資源です。いずれにせよ資源戦略は、この有形無形の経営資源をいかにして獲得し、またその価値を高め、そして配分するかにかかわる意思決定です。まず、資源戦略論を大きく変質させたきっかけは「経験曲線効果」の発見でした。これは、生産に関するコストが時間の経過と共に急激に下がる現象の一定の規則性のことです。経験曲線効果が観察できればその意義は急成長市場でとりわけ大きく、それをいち早く獲得する事で、圧倒的なコスト優位を構築する事が十分ありえるからです。また、経験曲線は価格戦略の策定にも役立ちます。例えば、「上澄み価格戦略」―市場が成長を始める前に利益を獲得する戦略、「成長志向戦略」 ―市場が十分成長したときに大きな利益を獲得しようとする戦略、「利益志向価格戦略」―市場の急成長段階に高価格を獲得しようとする戦略、などが選択可能です。各企業は自社の製品開発力。生産設備や流通販売網などを考慮し、いずれかの価格戦略を選択します。経験曲線は、市場シェアの戦略的重要性を明らかにし特定市場で高い市場シェアを素早く獲得し、累積生産量を他社に先駆けて積み上げていくことができれば、その企業の他にコストは劇的に下がり、その結果高い収益性を見込むことが出来ます。このように考えると経験曲線効果を最大限に生かす戦略は、「成長志向戦略」であることが分かります。

 経験曲線効果の発見は、次にポートフォリオ・アプローチの展開へとつながっていきます。この方法では、データを簡略化し凝縮する視覚的方法として、ポートフォリオ・グリッドと呼ばれる図が用いられます。この図は、全社の事業ユニットが円で表示され、その一つひとつは、縦軸で表される所属している産業全体の成長率と横軸で表されるその産業における相対的な競争ポジション(市場シェア)によってプロットされます。各円の大きさは、当該事業の売り上げ規模に比例しています。このポートフォリオ・マトリックスの最も重要な意義は、事業間のキャッシュ移転のあるべきパターンを示唆する点です。横軸は、どの程度キャッシュを生み出せるかに関係し、それに対して縦軸はキャッシュを使う程度、あるいはキャッシュの必要度を表します。このキャッシュフローの観点からマトリックスのセルを区別し、それぞれに属する事業に便宜的ラベルが与えられています。左上のセルにプロットされた事業は「花形」事業と呼ばれ、高成長分野で優位な競争ポジションを獲得しています。ただし、投資ニーズが高いので、キャッシュフローの面ではほぼ自己維持が出来るか、あるいはややマイナスです。左下のセルの事業は「金のなる木」と呼ばれ、低成長と高市場シェアから、これらの事業は通常低コストで優位な競争ポジションを獲得していますが低成長のため投資資金ニーズは低く。多額の余剰キャッシュを生み出しています。右上のセルは「問題児」と呼ばれ、高成長のため投資ニーズは大きいが、低シェアのためキャッシュ創出力は弱いため、問題児事業は花形に成長させるか、あるいは分離するかの戦略が推奨されます。マトリックスの右下の事業は「負け犬」と呼ばれ、この事業は、通常相対的に高コストのポジションにあるため、あまり利益が上がらず、キャッシュを失う可能性が大きいので、売却、収穫(清算)、全面閉鎖が推奨される事業です。しかし、産業魅力度(縦軸)も事業の競争力(横軸)も単一のインディケータだけで表現するのは単純過ぎるという批判があり、今日では多数のインディケータを取り上げ、それを合成して用いるポートフォリオ・グリッドが使用されています。

 

競争戦略論

 

 企業の成功失敗は競争にいかに対処するかにかかっています。産業の競争戦略は産業内で高い成果を上げ、それを維持するための企業の意思決定の事です。競争戦略の基本は、産業内で自社をどう位置づけるかというポジショニングの問題です。競争戦略論の出発点は、産業の競争構造の分析です。それをポーターは/卦参入の脅威代替品の脅威G磴ぜ蠅慮鮠栂廊で笋蠎蠅慮鮠栂廊ゴ存の競争相手との敵対関係、という五要因で表現する枠組みを提唱しています。産業ごとに平均的にみたとき、所属企業が資本コストを上回る利益を獲得できるかどうかは、これら五つの要因で表現される産業構造によって決まってきます。五つの要因は企業の価格、費用、必要投資額に影響を与え、したがって収益性に影響を与えます。ある企業がどういう価格を提示できるかは、買い手の力や代替品の脅威に依存しています。有力な買い手がいて、コストのかかるサービスを要求すれば、当該企業のコストや投資は増えるでしょう。有力な売り手がいれば、原材料や資本調達の費用は増大する可能性があります。産業内の敵対関係が激しければ、設備投資、製品開発、広告宣伝、販売などに従来以上に注力しなければならず、やはり費用と価格に影響します。新規参入の驚異があれば価格は抑えざるを得ないし、参入阻止のためには新規投資が必要かもしれません。以上、いずれのケースでも、結果として企業の収益に影響します。

 産業内で自社をどう位置づけるかというポジショニングの決定が、競争戦略では重要です。ポジショニング次第によって、企業は競争優位を獲得し維持し、その結果、産業平均を上回る高収益を上げることができます。長期的に維持できる競争優位を構築し、産業平均を上回る収益を安定的に上げることこそ、競争戦略の課題です。競争優位には様々なものがあり企業は多様な強みと弱みの組み合わせを持っています。しかし、それも突き詰めて考えれば低コストか差別化か、そのいずれかに行き着きます。コストリーダーシップ戦略では、産業における低コストプレイヤーの確立が目指されます。コスト優位の源泉は、規模の経済性であったり、独自技術であったり、原材料へのアクセスであったりします。経験曲線が重要な要因である場合もあります。コストリーダーシップは、産業のリーダー的企業だけが追及できる戦略であり、もしも多数の企業が横並びでコストリーダーシップ戦略を追求し続けたら、その産業は慢性的低収益に苦しむ可能性が高くなります。差別化戦略は、何らかの次元でユニークさを打ち出し、それによってプレミアムの獲得を目指す戦略です。製品それ自体、配送の方法、マーケティングなど、多くの要因が差別化の源泉となり得ます。差別化は追加コストを要求するので、差別化を目指す企業は通常、コスト優位ではありません。差別化戦略で肝要なことは、次元選択の問題で、次元の絞込みが重要になります。第三の競争戦略は集中戦略です。この戦略は、産業の特定部分をターゲットセグメントとし、それだけに焦点を絞り込み、その範囲の限りで競争優位の構築を目指すのです。集中戦略には二つの下位類型があり、ターゲットセグメント内でコスト優位の構築を目指すコスト集中戦略とターゲットセグメント内で差別化の構築を目指す差別化集中戦略です。集中戦略では、ターゲットセグメントの選択が二重の意味で重要です。第一に、その選択により産業全体にアプローチする会社との違いを打ち出さなければなりません。第二に、そのセグメント自体が競争構造的に見て魅力的なセグメントである必要があります。また、上述の戦略類型の複数を同時並行する事で、高い成果を得られなくなる事を「スタック・イン・ザ・ミドルの企業」と言います。

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